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熊猫的新聞(パンダニュース)~飼育係レポート~

熊猫的新聞(パンダニュース)
~飼育係レポート~

第2回 日本到着から来園1週間目まで 2011.3.25

(前回「2頭が飼育されている雅安から中国を発つまで」はこちら

 上野動物園の職員が中国へジャイアントパンダを受け取りに行っている間、日本での待機班は直前準備に明けくれていました。

 パンダ舎のリフォームが終わったのが2011年2月14日。そして、2月21日来日という日程を飼育担当者が知ったのは15日の午後でした。舎内の清掃、消毒、設備点検をおこないながら、急いで餌の調達にとりかかります。

 事前情報によって、主食のタケは1頭1日につき40~60キログラムが必要とわかっていました。急いで手配し、22日の早朝には、4種類490キログラムのタケが届くことになりました。トウモロコシ粉を主体に蒸して作る通称「パンダだんご」も、中国の材料にならって試作品を準備しました。こうした準備が、21日の来園直前まであわただしく進められたのです。

2月22日に搬入したタケ
2月22日に搬入したタケ

 いよいよ来日当日。夕方、成田空港へ出迎えに行きました。成都空港の出発は1時間遅れましたが、成田には予定通りの到着です。2つの輸送ケージが飛行機から降ろされました。1頭は落ち着いていましたが、もう1頭は不安なときに出す鳴き声を発しています。航空会社の係員にオスとメスを確認すると、不安がっていたのはオスとわかりました。その場で検疫をおこなってから、一路上野動物園へと走ります。

 午後11時半を過ぎたころ、たくさんの関係者やマスコミに迎えられ、ついにパンダ舎に到着しました。まずはオス、そして次にメスを部屋に入れ、無事搬入作業が完了。時計は深夜の零時30分を過ぎていました。

 メスはとりあえず用意してあったタケをすぐに食べ始めました。一方、オスは不安な鳴き声を発しながら、室内を一晩中走り回っていました。

 翌朝、マダケ、モウソウチク、シノタケ、ヤダケの4種類のタケが到着しました。メスはすっかり落ち着いて新しい環境に順応したようすで、4種類のタケと試作のパンダだんごも食べてくれました。一晩中走り回っていたオスも、タケを食べて少し落ち着きを取り戻したようでした。さすがに長旅の疲れも出たのでしょう。しばらく休んだ後、オスもだんごを食べてくれました。日本のタケとだんごを受け入れてもらい、餌に関しては一安心。あとはオスが新しい環境に慣れてくれるのを待つのみと思いましたが、そのオスも日に日に落ち着き、食欲が戻ってきました。

かつて飼育していたリンリン(オス)の餌。この量を1日2回与えた リーリー、シンシンの餌。1頭の1日分
かつて飼育していたリンリン(オス)の餌。
この量を1日2回与えた(上)
リーリー、シンシンの餌。1頭の1日分(下)
  • 動画ニュース
    「室内で竹を食べているようすを動画でごらんください(2011年03月01日撮影、約40秒)」
    Windows Media形式    QuickTime形式

 来園から1週間後、体重を測定しました。オスが130キログラム、メスが115キログラム。中国で過ごしていたときの状態に戻り、中国から同行したスタッフからも合格点をもらいました。

 3月4日、公開に向けて屋外運動場へも出してみました。飼育担当者の予想に反し、屋外への適応性はメスよりもオスの方がすぐれていました。オスもメスも運動場に生えているタケを食べてしまいました。日々食欲が増し、納品されてくるタケが足りなくなることもたびたびあります。そんなときは、動物園内に生えているタケを餌に利用してしのぎました。

 まだまだ2頭とも本領を発揮していないのかもしれません。これから驚くような発見に出会うのではないかと思っています。

〔上野動物園東園飼育展示係 倉持浩〕

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