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繁殖期にはパンダの展示を中止します

【2014/2/19】

  上野動物園ではジャイアントパンダ2頭(リーリー、シンシン)を飼育していますが、まもなく繁殖期を迎えます。この期間中の交配適期に同居をおこなう予定です。その場合、開園日でも展示を中止します。

 

展示中止期間

 2014年3月上旬~5月頃までの繁殖期  ※交配適期にあたる数日を予定

 

理由

 交配を目的とした同居をおこなうため。リーリーとシンシン

 

 ジャイアントパンダの繁殖期は一般的には年1回、2月から5月にやってきます。この期間中にメスの妊娠の可能性が高まるのは数日間だけです。上野動物園では自然繁殖を目指しており、メスの交配適期を見極め、交配のための同居をおこなう予定です。開園日であっても、展示を中止させていただきますので、あらかじめご了承ください。

 

同居実施の判断と展示中止時間

 繁殖期に入ったと判断した場合は、あらためてお知らせします。期間中は終日展示中止となります。

 

告知について

 展示の有無については、当サイトや、上野動物園のすべての出入口での掲示でご案内します。

 

現在の状況

 屋外放飼場には2頭が柵越しにお互いを確認できる箇所がありますので、自由に過ごさせていますが、お互いを気にするようすは見られていません。

 

昨年の経過

 2013年2月中旬より柵越しのお見合いを定期的におこない、2頭の反応を確認していました。

 2013年3月6日にシンシンに発情の兆候があらわれたため、3月7日よりジャイアントパンダ2頭の展示を中止し、見合いを進め同居のタイミングを計りました。3月11日の見合い時、2頭が柵越しに鳴き交わし、シンシンに恋鳴き、オスに対してのプレゼンティング等の発情徴候が認められたため、3月11日・12日と同居をおこなったところ、11日、12日と2回の交尾行動が確認されました。3月13日には互いに対する反応が弱くなったため、繁殖期が終了したものと判断し、3月15日から展示を再開しました。

 その後6月にシンシンは妊娠の兆候を示しましたが、最終的には出産に至らず、偽妊娠との判断に至っています。

 

 

【参考】

◎ジャイアントパンダの繁殖等に関する一般的傾向について

 

1.性成熟

 性成熟はオスで6.5~7.5歳、メスで3.5~4.5歳。

 

2.繁殖期

 繁殖期は一般的に2~5月。秋に発情するケースもある。繁殖期には、行動量の増加、臭い付け、水浴びによる体冷やしの増加、食欲減退、恋鳴きなどが見られる。発情期間は2週間ほどであるが、そのうち受精できるのは数日間だけある。

 

3.妊娠期間

 交配後、83~200日の妊娠期間を経て出産する。妊娠期間は個体差がある。これは、着床遅延(※)があるためで、受精してから着床するまでの時間が1日のものもあれば数週間かかるものもある。着床までの時間によって妊娠期間が変わる。

 

4.妊娠時に認められる変化

(1)食欲の変化

 出産の30日前頃から食欲が減退し、餌を残すようになる。出産間際には食欲が廃絶する。

 

(2)行動の変化

 出産の15日前頃より巣作り行動が認められる。出産間際には行動が不活発になる。

 

(3)体の変化

 出産の30日前頃に乳頭が確認されるようになる。出産間際には陰部の腫脹、乳房の腫脹が認められる。

 

(4)ホルモンの変化

 出産前の3.7週~8週に尿中のプレグナンジオール(妊娠の維持に必要な黄体ホルモンが代謝された物質)値の上昇が認められる。出産間際にはこの数値が下がる。(血液で検査した場合には、プロゲステロン(妊娠に必要な黄体ホルモン)値が上昇する)

 

5.妊娠の確認

 妊娠時に認められる変化により推測するが、偽妊娠(※※)という生理現象がみられるため、確定診断は難しい。

 

<用語の説明>

※着床遅延(ちゃくしょうちえん)

 受精卵がすぐに子宮内膜に着床せず、胚盤胞の状態でしばらくの間子宮内に浮遊し、それから着床・発育を始める現象。温・寒帯に分布するクマ類やイタチ類、鰭脚類、カンガルーなどに認められている。着床までの時間によって妊娠期間が変わる。

 

※※偽妊娠(ぎにんしん)

 偽妊娠は病気ではなく生理現象の一種である。排卵すると、受精しなくても妊娠と同じ経過をたどることが知られている。発情の後、妊娠しなくても、尿中ホルモン値の上昇、動作の不活発、長い休息時間、食欲不振、乳頭の明瞭化、乳房の腫脹、巣作り行動など妊娠した場合と同様の現象が現れる。これを偽妊娠と呼ぶ。出産することがないまま日数が経過し、上記の変化が認められなくなって終息する。

 

*参考文献

・「大熊猫 域外保全 理論と実践」(中国で発行された書籍)

・「ジャイアントパンダの飼育 上野動物園における20年の記録」

 

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