繁殖期にはパンダの展示を中止することがあります
【2013/2/28】
ジャイアントパンダの繁殖期は一般的には年1回、2月から5月にやってきます。この期間中にメスの妊娠の可能性が高まるのは、たったの数日間だけです。
当園では自然繁殖を目指しており、メスの交配適期を見極め、交配のための同居をおこなう予定です。開園日の場合、展示を中止させていただきますので、あらかじめご了承ください。
展示中止期間
2013年3月上旬~5月頃までの繁殖期 (交配適期にあたる数日を予定)
同居実施の判断と展示中止時間
同居実施を判断した翌日より、終日の展示中止となります。
告知について
展示の有無についてはホームページや全ての出入り口への掲示でご案内します。ご確認のうえ、ご来園ください。
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リーリー(左)とシンシン(右) |
現在の状況
食欲や行動に目立った変化は認められていません。現在、2週に1回程度展示場の裏側で柵越しにお見合いをさせて様子を観察しています。屋外展示場には2頭が柵越しにお互いを確認できる箇所もありますので自由に過ごさせています。ときには相手を気にする様子もみられますが、まだ繁殖期には入っていません。
昨年の経過
2012年3月25日朝より2頭が柵越しに鳴き交わし、シンシンに恋鳴き、オスに対してのプレゼンティング等の発情徴候が認められたため、当日の11時から展示を中止し、3月25日・26日・27日と同居をおこないました。
この間25日、26日と2回の交尾行動が確認されました。3月27日の同居では交尾行動が認められず、繁殖期が終了したものと判断し、3月28日から展示を再開しました。
その後7月5日にシンシンはオスの子1頭を出産しましたが、子は7月11日に死亡しています。
【参考】
◎ジャイアントパンダの繁殖等に関する一般的傾向について
1.性成熟
性成熟はオスで6.5~7.5歳、メスで3.5~4.5歳。
2.繁殖期
繁殖期は一般的に2~5月。秋に発情するケースもある。繁殖期には、行動量の増加、臭い付け、水浴びによる体冷やしの増加、食欲減退、恋鳴きなどが見られる。発情期間は2週間あるが、そのうち受精できるのは数日間だけある。
3.妊娠期間
交配後、83~200日の妊娠期間を経て出産する。妊娠期間は個体差がある。これは、着床遅延(※)があるためで、受精してから着床するまでの時間が1日のものもあれば数週間かかるものもある。着床までの時間によって妊娠期間が変わる。
4.妊娠時に認められる変化
(1)食欲の変化
出産の30日前頃から食欲が減退し、餌を残すようになる。出産間際には食欲が廃絶する。
(2)行動の変化
出産の15日前頃より巣作り行動が認められる。出産間際には行動が不活発になる。
(3)体の変化
出産の30日前頃に乳頭が確認されるようになる。出産間際には陰部の腫脹、乳房の腫脹が認められる。
(4)ホルモンの変化
出産前の3.7週~8週に尿中のプレグナンジオール(妊娠の維持に必要な黄体ホルモンが代謝された物質)値の上昇が認められる。出産間際にはこの数値が下がる。
(血液で検査した場合には、プロゲステロン(妊娠に必要な黄体ホルモン)値が上昇する)
5.妊娠の確認
妊娠時に認められる変化により推測するが、偽妊娠(※※)という生理現象がみられるため、確定診断は難しい。
<用語の説明>
※着床遅延(ちゃくしょうちえん)
受精卵がすぐに子宮内膜に着床せず、胚盤胞の状態でしばらくの間子宮内に浮遊し、それから着床・発育を始める現象。温・寒帯に分布するクマ類やイタチ類、鰭脚類、カンガルーなどに認められている。着床までの時間によって妊娠期間が変わる。
※※偽妊娠(ぎにんしん)
偽妊娠は病気ではなく生理現象の一種である。排卵すると、出産にいたらなくても妊娠と同じ経過をたどることが知られている。発情の後、妊娠しなくても、ホルモン値の上昇、動作の不活発、長い休息時間、食欲不振、乳頭の明瞭化、乳房の腫脹、巣作り行動など妊娠した場合と同様の現象が現れる。これを偽妊娠と呼ぶ。出産することがないまま日数が経過し、上記の変化が認められなくなって終息する。
*参考文献
・「大熊猫 域外保全 理論と実践」(中国で発行された書籍)
・「ジャイアントパンダの飼育 上野動物園における20年の記録」