ジャイアントパンダ母子の行動変化、そしてシャンシャンひとり立ちへの経緯と準備
【2018/12/1】
上野動物園で進めているジャイアントパンダ「シャンシャン」のひとり立ち準備について経緯と状況をお伝えします。
■ジャイアントパンダの子どもへの攻撃
ジャイアントパンダは、オスもメスも単独で生活する動物です。幼いときは母親やきょうだいといっしょに過ごすこともありますが、成獣になると、親子などの血縁関係のある個体どうしでも、食べ物や縄張りを争うきびしい生活を送ります。
単独生活をする動物の親子がわかれる時期は突然訪れることが多く、母親はある日突然、子に対する態度を豹変させます。執拗なまでに攻撃的な態度を示して子のひとり立ちを促し、自分の縄張りから追い出します。野生のジャイアントパンダの場合、その変化は1歳半から2歳の時期に訪れることが今までの調査研究からわかっています。
動物園では広大な飼育環境を用意することがむずかしいため、自然なひとり立ちを迎えさせようとすると、攻撃的になった母親が限られた空間の中で子に致命的なケガを負わせることも考えられます。
■シャンシャンのひとり立ち開始
上野動物園のシャンシャンも、1歳半を迎える2018年12月以降、突然親子わかれの時期が訪れると考えられます。2018年10月初めにシャンシャンが成獣と同じものを食べるようになったこと、シンシンからの授乳の時間が徐々に短くなり、ときには授乳を中断するようすが見られ始めたこと、また、栄養補助のための人工乳をシャンシャンが飲めるようになったことから、ひとり立ちへのステップを進めることにしました。
国内外でジャイアントパンダを飼育している施設では、動物の成長を見きわめ、1歳から1歳半の間で離乳と親子分離をおこなっています。上野動物園でもシャンシャンが安全にひとり立ちを終えることができるよう、計画にもとづいてステップを踏ませることにしました。
■ジャイアントパンダの成獣の行動
ジャイアントパンダの成獣は栄養価の低いタケやササを主食にしているため、活動している時間のほとんどを採食に費やし、その他の時間は休息して(寝て)過ごします。これはパンダが無駄なエネルギーを使わず効率的にくらしていくために、本来もっている生態です。シャンシャンも成長にともなって遊ぶ時間が減るかわりに、タケやササを食べる時間が多くなり、1日の行動も成獣に近づいてきました。
■現在の状況
成長したシャンシャンが母親シンシンとじゃれあうなどの行動を見せるのは、ひとり立ちステップを始める前も1日に1時間程度でした。ステップを進めている今も、授乳時を含めて状況は変わっていません。
放飼場に単独で出たシャンシャンがうろうろ歩き回ったり、シンシンといっしょになると後をついて回ったりする姿も見られますが、一時的にしか観察されず、しばらくすると落ち着いてえさを食べたり、休息をとったりしています。
かわいそうに見えるとのご意見もいただいていますが、単独で生活する動物の成長にあたって今が重要な時期であり、突然訪れる母親の行動変化にシャンシャンが直面する事態を避けるためにも、飼育下という人為的な環境ではひとり立ちのステップを計画的に進めることが最善の方法と判断しました。なお、シャンシャンの食欲や体重変化、糞の状態、24時間の行動を慎重に観察しており、健康上問題のないことをつねに確認しながらステップを進めています。
ジャイアントパンダという動物の特性、そして飼育下という状況をご理解いただくとともに、ジャイアントパンダ「シャンシャン」の成長を温かく見守ってくださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
(2018年12月01日)