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シンシンの近況(2013年6月25日)

【2013/6/25】

 上野動物園では、2013年3月11日、12日に、ジャイアントパンダの交尾行動が確認されています(記事はこちら)が、メスのシンシンの体の状態から偽妊娠(※※)である可能性が高まりました。

 

1.シンシンの現在の状態

 

(1)健康状態

 

 ① 体重

 6月15日現在128kg (6月15日以降、計測していません)

 

 ② 食欲

 5月28日頃から竹の採食量が通常の半分程度で推移していましたが、6月18日以降竹の採食量が多い日も見られるようになりました。まだ通常の量には戻っていません。

 

 ③ 行動

 休息と採食を繰り返しており、活動量に大きな変化はありませんが、6月18日頃から動きに俊敏さがでてきました。

 

 

(2)ホルモン値

 6月20日に採血した血液中の黄体ホルモンの値が、6月13日よりさらに下がっていました。

 

 

(3)体の状態

 乳頭や生殖器に出産直前のような変化は認められていません。

 

 

(4)見解

 ホルモン値では出産時期が近づいていると思われましたが、行動や体の変化については出産直前に見られる特徴を伴っておらず、シンシンは偽妊娠である可能性が高まりました。

 

 

2.今後の予定

  引き続き、健康状態や体の変化についての観察を続けたいと考えています。

 

 

 

 【参考情報】

 

◎シンシンの体重について

 健康状態に変わりがなくても、与える竹の状態や体重測定のタイミングによって、10kg程度の変動が認められます。

 

 

◎ジャイアントパンダの繁殖等に関する一般的傾向について

1.性成熟

 性成熟はオスで6.5~7.5歳、メスで3.5~4.5歳。

 

2.繁殖期

 繁殖期は一般的に2~5月。秋に発情するケースもある。繁殖期には、行動量の増加、臭い付け、水浴びによる体冷やしの増加、食欲減退、恋鳴きなどが見られる。発情期間は2週間あるが、そのうち受精できるのは数日間だけある。

 

3.妊娠期間

 交配後、83~200日の妊娠期間を経て出産する。妊娠期間は個体差がある。これは、着床遅延(※)があるためで、受精してから着床するまでの時間が1日のものもあれば数週間かかるものもある。着床までの時間によって妊娠期間が変わる。

 

4.妊娠時に認められる変化

(1)食欲の変化

 出産の30日前頃から食欲が減退し、餌を残すようになる。出産間際には食欲が廃絶する。

 

(2)行動の変化

 出産の15日前頃より巣作り行動が認められる。出産間際には行動が不活発になる。

 

(3)体の変化

 出産の30日前頃に乳頭が確認されるようになる。出産間際には陰部の腫脹、乳房の腫脹が認められる。

 

(4)ホルモンの変化

 出産前の3.7週~8週に妊娠の維持に必要な黄体ホルモン値の上昇が認められる。出産間際にはこの数値が下がる。

 

5.妊娠の確認

 妊娠時に認められる変化により推測するが、偽妊娠(※※)という生理現象がみられるため、確定診断は難しい。

 

<用語の説明>

 

※※偽妊娠(ぎにんしん)

 偽妊娠は病気ではなく生理現象の一種である。排卵すると、出産にいたらなくても妊娠と同じ経過をたどることが知られている。発情の後、妊娠しなくても、ホルモン値の上昇、動作の不活発、長い休息時間、食欲不振、乳頭の明瞭化、乳房の腫脹、巣作り行動など妊娠した場合と同様の現象が現れる。これを偽妊娠と呼ぶ。出産することがないまま日数が経過し、上記の変化が認められなくなって終息する。

 

※ 着床遅延(ちゃくしょうちえん)

 受精卵がすぐに子宮内膜に着床せず、胚盤胞の状態でしばらくの間子宮内に浮遊し、それから着床・発育を始める現象。温・寒帯に分布するクマ類やイタチ類、鰭脚類、カンガルーなどに認められている。着床までの時間によって妊娠期間が変わる。

 

 

◎過去に見られた偽妊娠の主な例

 

・1978年

 ランラン(メス)は5月17日にカンカン(オス)と交尾後、8月5日頃から食欲が落ち、8月8日には乳頭が目立ってきた。8月13日には食欲減退が顕著になるが、その後何もないうちに8月下旬より食欲が回復し、9月はじめには通常に戻った。

 

・1992年

 ホァンホァン(メス)に4月15日に人工授精後、5月下旬には尿中プレグナンジオール(妊娠の維持に必要な黄体ホルモンが代謝された物質)値が上昇、6月中旬から食欲減退が見られた。6月30日には尿中プレグナンジオール値が最高値に達するが、8月1日より発情の徴候が見られるようになった。

 

・2004年

 シュアンシュアン(メス)は2月23日と2月27日の人工授精後、5月中旬より食欲が減退し、巣作り行動がみられるなど出産を期待させる行動が発現していたが、6月中旬より徐々に回復し、6月下旬には平常時に戻った。この間、尿中プレグナンジオール値は5月28日にピークとなり、その後減少へと転じ、6月24日にはほとんど検出されなくなった。行動とホルモン値の変化から出産の可能性がないと判断した。

 

 

*繁殖に関する項目の参考文献:
・「大熊猫 域外保全 理論と実践」(中国で発行された書籍)
・「ジャイアントパンダの飼育 上野動物園における20年の記録」

 

 

<過去の記事>

シンシンの近況(2013年6月18日)

シンシンの近況(2013年6月11日)

シンシンの近況(2013年6月4日)

シンシンの近況(2013年5月28日)

シンシンの近況(2013年5月14日)

 

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