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熊猫的新聞(パンダニュース)~飼育係レポート~

熊猫的新聞(パンダニュース)
~飼育係レポート~

第17回 同居大作戦 2012/04/13

 同じ部屋に2頭のジャイアントパンダがいる、これは上野動物園では1999年のリンリンとトントンの同居以来、13年ぶりの光景でした。2012年3月25日17時49分にその瞬間はやってきました。多くの関係者が見守る中、メスのシンシンのいる部屋にオスのリーリーがゆっくりと入っていきました。

 シンシンに変化が見られ始めたのは3月15日ころからでした。しかし、初期の変化は微々たるもので、それが本当に発情期における変化なのか、毎日毎日注意深く観察していくしかありませんでした。これはいよいよ近いぞ!と確信したのは3月20日でした。昨年もこの時期に若干の行動の変化が見られ、この日も同様の動きが確認されました。ただ、「プールで体を冷やす」ような一般的にパンダが見せる発情期の行動ではなかったので、昨年の経験もあってシンシンならではの「恋心」だと感じました。昨年は顕著な発情行動が見られず交配に至りませんでしたが、今年もその可能性があり、20日以降顕著な発情行動が見られないままジリジリと時間が過ぎていきました。

 25日の朝パンダ舎に入ると、昨日までとは明らかに違う2頭の雰囲気を感じました。この1か月、私たちと一緒に観察をしてくれた中国人スタッフも同様の変化を感じたようです。朝のようすを見て、午後のペアリングを急遽決定したのでした。この日、2頭のパンダを見にいらっしゃった来園者の方々には大変申し訳ないことでしたが、午後から展示を中止しました。

 当初は室内で同居させる予定でしたが、いざ室内に入れると2頭に朝の勢いがありません。場数を踏んできた中国の専門家ですら「おかしいなあ?」を連発。ならば「外で」ということで、急遽屋外で試みることになりました。

 まったく準備していなかった屋外同居ですが、この1年自然交配を成功させたいという上野動物園の関係者と、この1か月間適宜アドバイスをしてくれた中国人スタッフの思いは一緒。全員の機転で無事実施することができました。

 3日間で3回の同居を試み、2回の交尾を確認しました。この間、同居のタイミングを指示しアドバイスしてくれた中国人スタッフなしには、なし得なかった成功です。呉さん、黄さんありがとう!!
 また同居をおこなった屋外施設は、一昨年の改修工事のときに工事関係者に無理を言って、急遽作ってもらった場所でした。当時、私たち飼育係の要望や無理難題を短期間のうちに実現してくれた関係者にはあらためて感謝します。

〔上野動物園東園飼育展示係 倉持浩〕

(2012年04月13日)

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