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熊猫的新聞(パンダニュース)~飼育係レポート~

熊猫的新聞(パンダニュース)
~飼育係レポート~

第14回 ハズバンダリートレーニング[1] 2011/09/30

 ようやく涼しくなってきて日中もジャイアントパンダを屋外展示できる日が続くようになりました。
 そんな今日この頃、パンダ舎にこんな張り紙が──「健康管理のトレーニングをおこなうので15:00~15:30頃ジャイアントパンダは1頭ずつの交代展示です」

 トレーニングってなんだ? と思う人はたくさんいることでしょう。「ハズバンダリートレーニング」など、聞き慣れない言葉が使われることもありますが、日本語にすると「馴致」(じゅんち)といいます。

 では実際にはどんなことなのか? 最も身近な馴致は飼いイヌに「待て」をさせてから餌を与えることでしょう。パンダの訓練もそのような簡単なことから始めます。
 ターゲット棒とクリッカーという道具を使います。ターゲット棒は指示棒の役割を果たす道具、クリッカーは動物が指示通りの行動をしたときに音を鳴らすものです。現在パンダ2頭におこなっている訓練では、まずこのターゲット棒を差し出します。差し出した棒先にパンダが鼻先を付けたらクリッカーを鳴らし、好物を与えます。この訓練によってパンダを立たせたり、座らせたり、寝かせたりといった姿勢を取らせることができるようになります。そしてこちらの指示する姿勢でじっとさせるように訓練します。こういった訓練をすることによって、麻酔をかけることなく動物の体に触れたり、状態を観察したりできるようになり、採血や注射といった健康管理をおこなうことができるようになります。

ターゲット棒の先に鼻を付けるリーリー(オス)
シンシン(メス)、餌を与えながら腕を出させる訓練中

 中国で2頭は、採血ができるくらいまでの訓練は受けていました。来日後も発情期の陰部の確認などのトレーニングはしていましたが、一般公開が始まってからは、閉園時に不定期におこなっている程度でした。
 今後の健康管理や発情、妊娠時の管理をスムーズにするためには、毎日の訓練が欠かせません。そこで、給餌時間などの1日のリズムを考慮した上で、午後3時からの訓練が最善であると判断したわけです。1頭につき15分程度の訓練です。
 ちなみに、上野動物園ではパンダ以外にもゾウやゴリラ、アシカなど多くの動物でトレーニングをおこなっています。

「アジアゾウのターゲットトレーニング」に関する記事

〔上野動物園東園飼育展示係 倉持浩〕

(2011年09月30日)

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