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熊猫的新聞(パンダニュース)~飼育係レポート~

熊猫的新聞(パンダニュース)
~飼育係レポート~

第4回 一般公開に向けて 2011.4.8

 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震による影響で、上野動物園は3月17日より臨時休園することになりました。22日の午後から予定していた一般公開も延期しました。公開を心待ちにしていたみなさまには申し訳ないことでしたが、この休園期間が私たち飼育係に落ち着きをもたらしてくれました。

 そんな中で、メスには発情の季節が迫っていました。ジャイアントパンダは本来単独で生活している動物です。発情のピークの時期以外にオスとメスを同居させると、激しくけんかをしてしまいます。
 今回は発情の兆候を主に行動を観察することによって見極め、同居をさせる必要がありました。

 3月23日、地震発生以来久しぶりの屋外展示訓練をおこないました。室内ではお互いの居室の間には距離がありますが、屋外では格子越しのコミュニケーションがとれます。発情が近づくとお互いに近づきアピールするのですが、この日はそのような行動もなく訓練が進んでいました。しかし、2頭がリンゴを食べているときに事件は起きました。網越しにおたがいが接近し、メスがオスに向かって鳴き声をあげました。すると、それに対してオスが鳴き返したのをきっかけに、メスが突然興奮状態に陥り、屋外運動場を落ち着きなく走り回り始めたのです。
 やっとの思いで室内に戻しましたが、興奮冷めやらず、屋内でも走り回るのをやめません。

手前がメスのシンシン
手前がメスのシンシン

 さらに疲れ果てて寝てしまうまで約6時間、うろうろと動き回っていました。まだオスの刺激が強すぎたのか?その後2日間、メスは元気も食欲もありませんでした。

 ようやく元気が戻った3月27日、再び網越しのお見合いにチェレンジです。するとどうでしょう。23日の事件がうそのように、メスがオスに対して少しずつアピールを始めました。23日の一件でオス嫌いになってしまったのではないかと心配しましたが、それは杞憂でした。

手前がメスのシンシン
手前がメスのシンシン

 この調子なら一両日中にもっと猛烈アピールになるはず。はやる気持ちを抑え、翌日以降のペアリングに期待を膨らませていました。パンダ飼育係以外にも観察の手伝いをしてもらい、同居に向けて万全の体制を整えて翌日に望みました。
 しかし、猛烈アピールになると思っていた行動が、日に日に終息していきました。今なお経過観察中ですが、結果として27日が彼女にとっての最大のアピールだったのかもしれません。
 初めて観る個体の発情兆候見極めの難しさをあらためて思い知りました。休園期間中にじっくり観察する中で得られた次につながる貴重な経験でした。
 こうしていよいよ待ちに待った一般公開日を迎えることになりました。

〔上野動物園東園飼育展示係 倉持浩〕

(2011年04月08日)

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