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熊猫的新聞(パンダニュース)~飼育係レポート~

熊猫的新聞(パンダニュース)
~飼育係レポート~

第3回 地震を乗り越えて 2011.4.2

 ジャイアントパンダ2頭は2011年2月21日に来園。その1か月後に控えた一般公開に向けて準備を進めていきました。

 一般公開に先立ち、3月15日にはマスコミ各社に事前公開する予定でした。ガラスごしに大勢の人に見られたら、2頭のパンダはどんな反応を見せるのか?そこで、動物園内の職員を募ってリハーサル!2頭は中国でも約2年間、広州の動物園で過ごしことがあります。人に見られるのは慣れっこのようでした。何の問題もなくこの課題もクリア。これで一般公開に向けて準備万端整いました。

職員を募って公開リハーサル
職員を募って公開リハーサル

 しかし、3月11日午後2時46分。その時、2頭のパンダは室内にいました。オスは休息中、メスはタケを食べている最中でした。私たち飼育担当者は屋外の展示場で準備をしていました。また、中国からパンダに同行してきた中国人職員はパンダ舎2階のモニター室にいました。

 地震に気がついた私たち飼育係は、まずは身の安全を確保し、揺れが収まってから急いで観覧通路側にまわって2頭のようすを見に行きました。2頭は驚いて落ち着きなく室内を走り回っています。

 そこへ中国人飼育係がやってきました。大きな揺れに多少は驚いたようでしたが、「四川の大地震はもっと激しかった。だからパンダも大丈夫」と不安がる私たちを励ましてくれました。

 そうです。2頭のパンダも中国人飼育係も四川の大地震を経験していたのでした。その言葉どおりメスはすぐに落ち着きを取り戻し、タケを食べ始めました。オスもその後たびたび起こる余震にしばらくは驚いていましたが、2時間後にはようやくタケを食べるようになりました。それ以降は2頭とも余震に驚くこともなく落ち着いています。

 ニュースでは衝撃的な被災状況が報道され、自身の帰宅もままならない中で、2頭のパンダと中国人飼育係に本当に励まされました。

 この未曾有の事態にマスコミへの事前公開は中止、一般公開も延期になりました。中国人飼育係も滞在予定を切り上げて帰国してもらうことになりましたが、帰国直前までジャイアントパンダと私たちを気づかい、適切なアドバイスをしてくれました。

ケージからパンダに腕を出させる訓練。採血のときなどに役立つ。
ケージからパンダに腕を出させる訓練。採血のときなどに役立つ。

 ここで、パンダとともに同行してきてくれた中国人スタッフを紹介しましょう。四川から来た張さんと黄さんの2名です。張さんは人工保育のスペシャリスト、黄さんはパンダの馴致のスペシャリストです。ふたりは最新の中国式飼育方法と馴致方法を私たちに伝授する一方で、36年間積み上げてきた上野動物園の飼育管理方法も尊重してくれました。おたがいの優れたところを取り入れ、そのつど話し合いながら、今後の上野動物園の最適な飼育方法を模索していきました。ふたりの帰国後も、メールを通じてその模索は続いています。

中国人スタッフを囲んで。前列向かって右から2人目が張さん、3人目が黄さん。
中国人スタッフを囲んで。前列向かって右から2人目が張さん、3人目が黄さん。

〔上野動物園東園飼育展示係 倉持浩〕

(2011年04月02日)

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